近年、中古スマホ市場の拡大が止まりません。
2022年度の中古スマホ市場は、前年度比13.7%増の241万台で、2026年度には342万台に達すると予想されています。
でも、なぜこんなにも中古スマホは人気になっているの?
本記事では、中古スマホがここまで人気になっている理由を5つ挙げて解説していきます。
中古スマホが人気な理由5選
中古スマホが人気になっている理由は大きく、5つあります。
- 新品スマホの価格が激しく上がっている
- SDGsの一環として、中古品への理解が深まっている
- スマホのスペックアップが頭打ちになっており、中古スマホでも十分なスペックがある
- SIMロックが原則禁止となった
- 消費に対する、若年層の価値観の変化
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
新品スマホの価格が激しく上がっている
中古スマホが多く売れている最も大きな理由として、新品のスマホの価格が上昇していることが挙げられます。
ここでは1つの例として、iPhoneの無印シリーズの定価を確認してみましょう。
機種名 | 価格 |
---|---|
iPhone4(32GB) | 57,600円 |
iPhone5(32GB) | 61,680円 |
iPhone6(128GB) | 96,984円 |
iPhone7(128GB) | 90,504円 |
iPhone11(128GB) | 86,184円 |
iPhone12(128GB) | 99,880円 |
iPhone13(128GB) | 98,800円 |
iPhone14(128GB) | 119,800円 |
iPhone15(128GB) | 124,800円 |
いずれもAppleのSIMフリーモデルの価格。
表・グラフを見ると分かる通り、多少の上下はあるものの、iPhoneの新品の価格は年々上昇しています。
でもiPhoneの値段がどんどん高くなったら、iPhoneを買う人も減っていっちゃうよね…?
実は、iPhoneは年々高くなっていますが、その一方で売上も伸ばしています。
iPhoneが値上がりした理由
iPhoneが値上がりした要因として、iPhoneがブランドとしての地位を完全に確立したことが挙げられるでしょう。
少し話は変わりますが、iPhoneの価格は上昇しているにも関わらず、日本の実質賃金は、iPhone 4が発売された2010年から、iPhone 12が発売された2020年にかけて、4%しか上がっていません。
そのため、iPhoneの値上げの影響をモロに受けてしまっているのです。
アメリカなどの海外では、iPhoneを値上げしているけど、それと同時に給料も上がってるから、iPhoneは売れ続けています。
iPhoneの値上がりはブランド料だけが原因ではありません。
コロナ禍での半導体不足や、ウクライナ戦争の影響により、原材料価格の高騰が生じたことも一因です。
「通信料金と端末代金の分離」も価格上昇の一因に
2019年に改正された「改正電気通信事業法」も、スマホの本体価格の上昇の一因になっています。
この改正により、
通信役務の継続利用及び端末の購入等を条件として行う利益提供を一律禁止。また、継続利用を前提とする新規契約を条件として行う利益提供を一律禁止。
通信役務の利用及び端末の購入等を条件として行う利益の提供は、2万円(税抜)を超えるものを禁止。
☆10月1日から「スマートフォン等の契約を取り巻く環境」が変わりました。
となりました。
これだけじゃ何を言ってるのか全然分からないよ…
簡単に言うと、回線とスマホのセット割について、厳しく制限されたということです。
これにより、スマホ本体価格の割引額は小さくなり、結果的に新品のスマホを購入しづらくなっているという現実があります。
理由は何にせよ、新品スマホの価格が大幅な上昇傾向にあることは間違いありません。
iPhoneの最新機種は、庶民にとっては高い買い物となってきました…
SDGsの一環として、中古品への理解が深まっている
SDGsの17個の目標のうち、12番目では「つくる責任つかう責任」が謳われています。
特に12-5では「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」とされています。
参考:SDGs(持続可能な開発目標)17の目標&169ターゲット個別解説
これにより、今までも盛んに行われてきた3R、
- Reduce(リデュース)→ゴミを減らそう
- Reuse(リユース)→製品を再び使おう
- Recycle(リサイクル)→廃棄物をエネルギー源として有効利用しよう
に再び脚光が当たっています。
参考:3Rについて | リデュース・リユース・リサイクル推進協議会
その流れを受け、リユーススマホとも呼ばれる中古スマホが、世間の注目を受けています。
リユースに対する全国的な注目が、中古スマホの人気に繋がっているんだね
スマホのスペックアップが頭打ちになっており、中古スマホでも十分なスペックがある
スマホの黎明期では、スマホのスペックは必ずしも十分ではなく、動作がカクつくといったことが多く発生していました。
初期のAndroidスマホはカクツキが多すぎて、非常に評判が悪かったですよね…
その名残りで、今でもAndroidスマホは性能が低いと考えている人も少なくありません。
しかし、近年のスマホは全体的にスペックが上昇しており、少なくとも日常使いにおいて困るようなことはなくなりました。
スマホのスペックを測定するAntutuというベンチマーク(アプリ)があるのですが、Antutu(v9)では30万点を獲得すれば、少なくとも日常使いでは困ることはないとされています。
ここで、近年のiPhoneのAntutuスコアをまとめてみます。
機種名 | 発売年 | Antutuスコア |
---|---|---|
iPhone 14 | 2022年 | 818263 |
iPhone 13 | 2021年 | 779982 |
iPhone 12 | 2020年 | 688603 |
iPhone SE2 | 2020年 | 569529 |
iPhone 11 | 2019年 | 596273 |
iPhone X | 2018年 | 398171 |
iPhone 8 | 2017年 | 370278 |
iPhone 7 | 2016年 | 303071 |
iPhone 6s | 2015年 | 231902 |
iOS Ranking – AnTuTu Benchmarkをもとに作成。
このように、2016年に発売されたiPhone 7以降、Antutuベンチマークスコアは全て30万点を超えており、日常使いのためのスペックとしては必要十分なのです。
もっとも、OSのアップデートが打ち切られたり、機体が劣化したりしているため、2016年のスマホでも現役バリバリで活躍できるという意味ではありません!
少なくとも、数年前に発売されたスマホであれば、多くの人にとってスマホのスペックはもはや高すぎるともいえます。
スマホ全体の能力が向上し、一般的な使用においては、いずれも十分なスペックを持っていることは、中古スマホが人気になっていることの一因です。
また、スマホのスペックが大きく向上したことで、サブスマホ(2台目以降のスマホ)としての需要も高まってきています。
中古スマホをSIMカードなしで、Wi-Fiのみで運用するという運用も可能で、費用を抑えつつ、2台持ちを実現できる方法として人気があります。
SIMロックが原則禁止となった
まず、SIMロックについて簡単にご説明します。
特定の事業者に係るプロファイルが記録されたSIMに対してのみ動作するよう設定された端末上の制限をいう。
移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン
総務省の資料によると、このように説明されていますが、なんのことやらですよね。
一言でいうと、ある会社のSIMロックがかかっているスマートフォンについて、他会社の回線を使えないようにする仕組みのことです。
SIMロックが存在する理由はいくつか挙げられますが、各キャリアが、回線の乗り換えを阻止するためにSIMロックをかけていたという側面が大きいです。
SIMロックに対して総務省は厳しい対応を示し、2017年に、総務省は「移動端末設備の円滑な流通・利用の確保に関するガイドライン」を策定し、原則として、携帯各社にSIMロックをかけることを禁止しました。
その結果、各携帯キャリアでは以下のような対応を取ることとなりました。
キャリア | 対応 |
---|---|
ドコモ | 2021年8月27日(金曜)以降に新たに発売される機種をご購入される場合は、SIMロックが設定されていないため、SIMロック解除の手続きは不要です。 |
au | 2021年10月1日(金)以降に新たに発売されたau携帯電話をご購入されたお客さまへ ご購入されたau携帯電話に、SIMロックは設定されておりませんので、SIMロック解除のお手続きは不要です。 |
Softbank | 2021年5月12日(水)以降にソフトバンク取扱店にて製品を購入されたお客さまへ SIMロック解除対応製品を購入された場合、購入時にSIMロック解除の手続きを実施した状態でお渡しします。お客さまのお申し出によるお手続きは不要です。 |
楽天モバイル | 楽天モバイルで購入いただいた製品は、全てSIMフリー製品のため、SIMロック解除のお手続きは不要です。 |
基本的に2021年以降に発売されたスマホについては、SIMロックがかけられないこととなっています。
SIMロックにより、今までは中古スマホの乗り換えには一定の障壁がありました。
しかし、SIMロックは今後原則として禁止されましたので、中古スマホを利用した回線乗り換えが盛んになってきています。
このように、SIMロックの原則禁止が中古スマホの人気の要因となったことは疑いようがありません。
消費に対する若年層の価値観の変化
最後に指摘する点は、必ずしも中古スマホの人気に直結しているわけではありません。
しかし、中古スマホへ意識が向く間接的な要因になっていると思われるので解説します。
近年、特に若年層において、消費に対する価値観が変化していると言われます。
原田曜平「若年層の価値観と消費」というインタビューでは、以下のように述べられています。
基本的に,すごく凝ったもの,すごく性能が良くていいもの,すごく高いものなどは軒並み厳しい。それをどうにかして若年層に売ろうというのは難しいと思います。
若年層の価値観と消費
インタビュー内で、若者の中では、「性能が高い製品なら高くても良い」という価値観が薄れ、必要なものだけ買うといった傾向が強まっていると指摘されています。
これは、まさに新品スマホへの執着の薄まりを示していると感じられます。
今までであれば、フラッグシップモデル(最新・最上位機種のこと)に対する憧れや購入意欲が強く存在していましたが、このような流れを受け、必ずしも新品スマホへこだわらない人も増えてきているのです。
特に若者の中での、消費に対する消極的な傾向が、その裏返しとして中古スマホの人気に繋がっている可能性は十分に考えうるところでしょう。
中古スマホが気持ち悪いと感じる人も
以上、中古スマホが人気になっている理由について解説してきました。
一方で、今でも「中古スマホが気持ち悪い」と感じる人も少なくありません。
実際にアンケートをとったところ、中古スマホの購入に抵抗がある人は、全体の9割近くという結果が得られました。
中古スマホへの寿命の短さや、前の所有者が分からないことへの不安が、抵抗感の主な要因になっているようです。
しかし、きちんとした中古スマホ専門店や、未使用品を選ぶことによって、中古スマホへの不安は大幅に減少させることができます。
中古スマホをどこで買うべきか悩んでいる方は、こちらの記事をあわせてお読みください。
中古スマホには危険性も
様々な理由で、中古スマホは人気になっているし、今後ももっと流行ることが確実視されているんだね
安い価格で、十分なスペックが得られる中古スマホは大変魅力的ですが、何点か気をつけるべきポイントも存在します。
特に初めて中古スマホを購入する場合は、この4点に気をつけましょう。
- ネットワーク利用制限
- SIMロック
- バッテリーの劣化
- 悪意のある前所有者が入れたウイルス
急に、難しい内容が出てきた!
やっぱり中古スマホは面倒くさいじゃん…
チェックリストにするとややこしいように感じるかも知れませんが、それぞれのポイントは非常に簡単に確認できます。
中古スマホを購入する際の注意点は、こちらの記事で分かりやすくまとめていますので、中古スマホが気になっている方は、必ず確認してみましょう。
注意点を守って、楽しい中古スマホライフを
中古スマホは、近年非常に人気になっています。
みなさんも注意点を守りつつ、楽しい中古スマホライフをお送りください!
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